マナーをなんとなく覚えておいた方がいい気がしたので少しばかり勉強していた.自分の死角になっていることが多かったため,学ぶことが楽しかった.勉強していて主に感じたことがある.表現技法として有用性の高い分野であること,そこから普遍性を見出すことができる可能性の二点である.マナーをどう改善するかはおいておくことにして,マナーを用いてどう絵的な表現をすることが可能であるかを考えたい.
学ぶことの意義,マナーの立ち位置
マナーを持っているとそれに起因した印象を与える.持っていないと与えない.品のない印象を与えるかというと,そうではなく,正の方向のみ加算が行われる.加算されていることを前提とすることが悪い印象を与える原因となっている.決して人間性を決定づける代物ではない.しかし初対面の印象は長く保たれるものであるので,悪い印象を与える可能性を排除することは少なくとも悪いことではないだろう.マナーをたしなむ人はゆとりや奥ゆかしさのある人物の印象を与えるだろう.マナーを押し付ける人物は独善的・観察眼のある,共感性羞恥を強く感じる人物の表現になるだろう.
顔とカトラリー
顔の向きとカトラリー(箸やフォーク)の向きこそがテーブルマナーの大部分である.
顔の向きは感情表現でもよく用いられる.「前向きな」「伏せがち」「そっぽを向く」など枚挙にいとまがない.テーブルマナーにおいては前を向いて食事を行うことが非常に重要である.前を向いて食事を行うことは対話を意識していることの意思表示になる.つまり「あなたと過ごす時間が大切である」と伝えることができる.下向き(食べ物に顔が向いている)のときは,相手に対話の意思を感じさせない.本能的であることの表現になる.また,顔を前に向ける意識を持っていると自然と背筋が伸びることにつながる.そのため前を向いて食事をすることは背筋が伸びていて,凛とした印象を与えることにつながる.
カトラリーの向きは人間の心の奥底を映し出す鏡のようである.ダンスでは指先を意識することが重要だが,カトラリーはその指先の延長であると考えることができる.そのため無意識がより滲み出る部分である.箸・ナイフ・フォークのような先のとがったものは攻撃性を感じさせる要因になる.そのため,相手向きにしないことは相手に安心感を与える要因となる.逆に強い物言いをしたいときにカトラリーを相手に向けると少し怒ったような印象になるかもしれない.
食後
食後の皿には片付けを含めた食事の後のことを考える気遣いを示す.ソースを綺麗に食べきることや魚の小骨を綺麗にまとめること,ご飯粒を残さずにいただくことなどに現れる.それらから食後の皿は相手がどのようなことを考えていたかを示すファクターになる.食事描写のあとに食後の皿をさりげなく映すと食事中の心の底がどうであったかを示すことができる.ツンツンしたキャラクターだが食後は綺麗である.といった意外性を示すときに使うと効果的かもしれない.
ノイズ
食事中のノイズとは咀嚼音や食器で音をたてることが当てはまるが,香水の匂いやシーンに合わせた服装を考えることも含まれる.音は特に当てはまることだが,ノイズは快適な食事を阻害するために多くの人が不快感を覚えるだろう.そのため身勝手・独善的・困窮のような表現ができる.相手が音を立てながら夢中で食事をしているシーンを使えば,身勝手だがどこか暗がりの雰囲気を醸し出すことができるだろう.香水などはさりげなく図的に示すことは難解であるが,それを用いると傲慢・高飛車な印象を作ることができるだろう.服装からは,身勝手・未来を見据えていないといった表現ができるだろう.
国ごとの背景
マナーを勉強することは食事のさらに奥に位置している国の存在を意識することでもある.そうしたことを知っていると博識な印象を受けるが,それ以上に多様性を認める寛容さを備えている印象を受ける.お酒との付き合い方や,カトラリーに対する理解,麺類を食べるときに音を立ててよいかなどがある.厳密にはシェフ全体の意向が国の背景として機能しているが,であるからこそそれらを知ることはより多くの考えに触れることになる.
ベクトル・Q&Aが普遍性
マナーから学べることは大別して向きとルーツ,それに対するアプローチである.顔や物の向きには力が込められている.向きのある力をベクトルというが,人間は無意識でそれを読み取る力が備わっているようだ.食後やノイズは場にあたるだろう(場からベクトルが発生する).ルーツを知ることで自分自身がどのようなアンサーを出すか.ということがマナーから見ることのできる人間性だと考えられる.
普遍的に変換すると,物の向きに意味合いを持たせることができる.ある事象を知り,その後どのように行動を変化させるかで人間性を見ることができる.
参考