今回はシナリオを引き立たせるのための絵作りの後半にあたる配色である。
彩色はイラストの印象を大きく決定づける要因であることは言うまでもない。色の印象は、多くの場合連想的な場合が多い。どういうことかというと、赤で熱いと感じるのは炎を連想しているからだ。緑でリラックスするのは自然を連想しているからだ。青で冷たいと感じるのは海を連想しているからだ。一概に言えるものではないが、ストーリーテリングにおいてはある種の暗黙の了解のような配色を意識的に行うことが重要と感じる。多くの繊細なイラストレーターにおいては色の印象について厳密に考える方もいるだろうが、重要なことはストーリーのための引き立て役に徹することである。であるから一度配色を簡単にしてしまおう。
●ワークフローについて

上図を参照しながら読んでいただきたい。
①ストーリーを通して一貫したカラーを決める(作品のカラー)
一貫したカラーを決めることは絵柄を作ることに似ている。大きく外さなければ問題のない項目であるが、何かしらの統一性を持たせることは作品に集中させるために重要なことだ。加えて大きな緊張を持たせるためにも重要である。つまり、絵の見せ場である。絵によってでしか伝えるのが困難な要項においては絵が全面に出ることはおかしなことではない。重要なことは顧客に伝えることだからだ。ここでは先ほどとは矛盾したことではあるが、一貫したカラーから外した配色を意識的に行うことがベターである。なぜなら、絵に関して普通でないことが起こっていることのアピールを自然におこなうことができるからである。だからこそ、それまでのイラストの配色で連続的に感じさせる必要がある。
一貫したカラーは作品のテーマから決めると没入感を作ることができるだろう。悲劇で黄色を一貫したカラーにする人は相当ひねくれものだ。とにかく、まずはテーマを明確すること。どのような世界観で、どのような主張の作品であるかを確認しよう。そこからカラーを決めよう。同じことを繰り返すがカラーを決める際において、一般的な見え方を重視しよう。そのためにもやはり配色に関する本を一冊は持っておこう。それを軸に色を決定していき、感覚を理解したらそこから外していくとオリジナリティを出せるだろう。
②その場面におけるキーとなるカラーを決める(柱のカラー)
一貫したカラーを決めたところで、次は第二の色を決める。色は相対的に判断されるので、二色以上をもって初めて色が意味を持つ。柱というのは場面のことである。その場面における主張・印象に適した色を彩色する。ここでは①と相対的な位置関係も意識して配色を行う方が良い。そうすることで二番目の色をより効果的にできるだろう。したがって、調和色は基本禁則としたい(テーマの強調としてはありかもしれないが、その時においては①のカラーを変更することの方が効果的だ)。二番目のカラーは①の作業と異なり、柱ごとに自由度を持っている。だがしかし、連続性をより重要視するべきだ。ここでは配色の前後関係に注視しよう。前後の二番目のカラーの角度に注目して、それらの関係を意味のあるものかつ印象を変えすぎないためには、(個人的に)現在のカラーから±30~60°の領域を使うことが適切であると思う。この領域の裁量については各自議論していただきたい。イラストをより一層脇役として扱いたいのであれば特定の色を捨て色としてもよい。そうすることで印象がより強固なものになる上に、色の決定に悩みにくくなる。
●時間短縮のための配色ツール
配色にはいくらか定番のものがある。それを時短のツールとして活用し、②の色の決定を高速にしたい。そうすることで手のかけたい部分に力を入れよう。

①オストワルトの色彩調和論
同系列にもつ色には秩序があり調和する。
②ムーン・スペンサーの色彩調和論
対照関係が明確にある色は調和する。
③ナチュラルハーモニー(NH)とコンプレックスハーモニー(CH)
ナチュラルハーモニーは高明度ほど低彩度・黄色に近づき、コンプレックスハーモニーはその逆である。基本的にナチュラルハーモニーを採用し、コンプレックスハーモニーは緊張を作るタイミングで採用すると良いだろう。あるいは、作品を通してコンプレックスハーモニーを使用するのもよいだろう。
参考