以下は理論ではなくレシピなので、ご注意ください。
音楽は料理に例えられることが多いですが、それになぞらえるとミキシングのフローは下ごしらえと焼きと煮込みの3つにわけることができます。今回は下ごしらえについて書きます。
話の前に、楽器の音域を広げすぎないを念頭に置いてください。それ自体が悪いことではありませんが、ミキシングの難易度が上がります。また、いい楽譜を作ることを心掛けましょう。良い楽譜を作るとミキシングが楽になります。また、アナライザーに全て答えが書いてあるので、自分の耳を頼る以上に可視化ツールを頼ってください。
下ごしらえ(EQ)

まず、下ごしらえ。食べる部分だけをさばき、臭みを落とす。音楽なら、使わないところの音を遮断、うるさい音を抑制するだけなので簡単ですね。
ローの帯域(25~100Hzあたり)を特別意識して切ったり、削ってみましょう。調整することによって、その音単体の音はしょぼく感じるかもしれませんが無視しましょう。削るほど雑味が減ります。雑味がおいしいこともあるので削るべきかどうかを判断することが最も重要なことですが、あまりわからないうちはとりあえず削っておけばまとまりがよくなります。ミキシングに慣れてきたら、雑味が欲しくなりますので、その時に削らない方向に向かってみましょう。楽器隊を属性分けして、使わない所はどこなのかを考察してみましょう。というのも、曲が変わっても楽器隊ごとに同じような処理をします。実際のミキシングにおいては、それを基本として削り具合と削る帯域のボーダーがやや左右します。
①ボーカル
低いところ(大体100Hz以下→400Hzくらいまで問題ないです)を遮断、高いところを削ってください。高いところは任意ですが、削りすぎるとこもった音になるので、こもらないギリギリを攻めてください。
②ベース・タム系
高いところ(大体1kHz以下)を遮断してください(トーンが削れ、スペースができます)。あるいは、400~800辺りを10dB程度削り、1000~2000Hzを5dB程度ブーストするのもよいでしょう(肉がそぎれる感じがしますが、音の味わいが感じ取れるような処理です)。低いところ(大体30Hz)は10dBくらい削ってください。とても低いところ(25Hz以下)はいっぱい削ってください。完全に遮断してもいいです。低音を削るほどに雑味が小さくなります。その場合、25Hz以下を補強するシンセベースをあとから足してもいいと思います。25~50Hzをディストーションなどでひずませるとグワグワして聴きごたえが出ます。
③和音系
低いところ(50Hz以下)を遮断してください。100Hz以下は削ってください(大体5dBくらい)。高いところ(5kHz)を遮断してください。また、1kHzと2kHzを大きく削ってください(3~15dBくらい)。これは楽器によりますが、存在感がなくなるまで削ってください。存在感を出したい箇所にオートメーションを書き、削った分を戻す処理をすると、意図がわかりやすくなるので、それもおすすめ。また、2kHz以上は削っても削らなくても良いですが、削る場合は6kHz周辺にストリングスを合わせるようにすると良いと思います。最後に、ボーカル帯(大体1k~2kHz)を全体的に削ってください。和音系はバッキングと相談して決まりがちですが、大体これで事足ります。
④リード系
③に加え、和音系と重ならないように低域(大体500Hz以下)を削ってください。聴き心地が軽い・深みがないと感じるあたりまで削ると良いです。また、和音系よりも1kHzと2kHzを大胆に削ることがコツです。そんなに削っていいの?ってくらい削ってください。また、ギターの音作りに悩んでいる方もこれを使うと解決する可能性があります。
⑤金物
低域(500Hz以下)を遮断してください。高域は2kHz以上を削るか、うるさくなくなるまで音量を下げてください。また、18~20kHzあたりはかなり繊細なので、注意を払って0~5dB程度、耳障りにならない程度に削りましょう
バッキングだと大体こんな感じ(OzoneのEQ)






こんなのも参考にしたらいいと思います。
スグに使えるEQレシピ DAWユーザー必携の楽器別セッティング集
次回
下処理のあとに焼きと煮込みの行程がありますが、焼きは解説しません(解説しました)。焼きはコンプ・ノイズ処理など、生音で必要になる処理ですが、私は生音は使っていないのでわからないです。なので次回は煮込み行程に当たるリバーヴについてです。
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