【ネタバレあり】WHITE ALBAM 2 -coda- 感想

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 最終的に2部が自分の中では最高だったけれど,3部がそうだったかというと決めかねる.間違えなく言えることは3部ほど苦しめられた作品は今までなかった.感想と言いつつもいつも考察だとか説明がましくなってしまう.けれど共通認識をもつためなので仕方ないと思いながら書いた.

かずさN(浮気エンド)感想

 全ルートで中最悪で,胃を最も荒らされて,かずさの思いに泣かされた.1部と同じことを繰り返してしまう話だけれど,本人もかずさもそれを自覚していているがために胸が締め付けられる.通常の物語形式だとこれを描くと駄作だけれどアドベンチャーはこれを容赦なく描けるのがいい.それでいて,このルートがあるからこそほかのルートがより一層輝く.主人公は間違いなく1部ではかずさが最愛でかずさには勝ちようがない状態だったけれど,codaでは雪菜と同じ時間を重ねてしまったために主人公は忘れるためにかずさと真剣に向き合い,かずさだけのことを考え,そうなる状況に置くことで解決しようとした.それをかずさが見透かしてしまっているのが辛すぎる.旅行先のベットシーン(布団だけど)で主人公が心的に押しつぶされそうになっていて,美麗な絵で素晴らしいボイスなのにまるで使えない.こんなにも辛いシーンは他になかった.曜子さんをかずさから取り上げる問題をこの話では明かさないのがずるくて,面白い.かずさには自分しかいないという強い決心を持てないから.だからこそ雪菜を忘れられない.憶測でしかないけれど曜子さんは浮気ルートの結果で完成したかずさではないのだろうか.話が進むにつれて確信に近づいていった.避妊はしていないし.曜子さんが父親について話さないことも,逆説的にそうであると言っているようなものだ.電話で番号を告げて浮気するのはニヤニヤした.そういうシチュエーションを作り出し見せる力がすごい.ここでも1部を繰り返すように雪菜との進展を部屋の隣で思い知らされるのは,わかっていてもモニターから目を背けてしまいたくなった.ただやはりいいシチュエーションであることは間違いないが,それはそうとして使えない.5年前の温泉宿に浮気旅行に行くシーンはちょっと驚くところがあって,5年前の旅行で温泉に入っているシーンでのCGだ.こんな伏線だれが気づくのか.軽い気持ちで通り過ぎたCGが自分をこんなにもゾクゾクさせた事実が心の底から悔しい.かずさが胸に手を当てているのは恥ずかしがっている表現であること以上にかずさが孤独である状態の説明をしている.そうである根拠が雪菜側を見ると片手は膝の上に置き,片手は主人公とつないでいることにある.こんな素晴らしい絵での表現はずるい.パッと見ではかずさが恥ずかしがって胸をあてていなくて,雪菜はそうでないという対比の構図だと思っていたのだけれどそんな生優しいものではない.雪菜が3人をつないでいると主人公だけが思っていた.その描写がされるまで主人公がどうしているかは見えない状態だけれど,深く絵と向き合えば気づけただけに少し悔しい.主人公はこの場所で結婚を宣言してしまうのも残酷すぎる.雪菜の残り香がある場所で告白することはかずさにとって嬉しいはずがない(忠犬かずさはそれでもうれしいだろうが).主人公は最後まで雪菜を忘れるために雪で上書きしようとした.かずさだけを見ていなかった.それでもかずさだけを見て,かずさをすがる様は,彼女にとって必要な人物像ではなかった.主人公がピアノを失ったかずさのようになってしまった.それを見ることで心機一転して失恋し,それを後悔させないようにピアノを弾いた.かつての自分がした後悔を繰り返させないために.そんな自分から離れる強い意志を白い雪なかに引きで佇むCGから感じた.引きの絵はいくつかあるが後で確認してみたらやはりこの絵が一番カメラを引いているので確信に変わった.ここのエンディングで一番泣いてしまった.かずさは失恋することで完璧なヒロインになるようにできているとわかってしまった.ここで流れるclosingのどこまでもまっすぐな歌詞がしみて,この女を幸せにしなくてはいけないと思わされる.

かずさtrueエンド感想

 究極の二者択一で,麻里ルートに近いものを感じた.浮気エンドと違って,全ての人に対して真剣に向き合い,真剣に切り捨てる.ここは浮気エンドとの対比がはっきりしていて面白い.かずさ派の私にとっては一番幸せなエンドだった.朋にも言われたが,プラトニックである.逆にプラトニックだからこそ迎えられたエンド.一切ベットシーンCGもキスもない(その分浮気エンドにしわ寄せがあったけれど).シナリオとしてはすごくいいし,その方が安っぽくなくていい.でも少しでいいから,一枚でいいから使えるところにCGを入れてほしい.そこは彼氏特権なのか?かずさの思いの強さがこのルートで一番出ている.かずさには曜子さんとピアノしかない.そこから曜子さんを取り上げるとピアノしかなくなる.かずさにはピアノしかないのにそれすら失ってもいいほどの気持ちを自分の手を壊すことで(未遂だが)雪菜に見せつける.そんなところを見せつけられたら白旗を上げるしかなくなるだろう.それで雪菜の精神がおかしくなってしまうのが辛い.エンディングまでこんな調子なのだからもはやサイコホラーだ.「POWDER SNOW」の歌詞の「I still love you」で血の気が引いた.どうして諦めきれないのか.雪菜の押しつける愛によるところなのかと思う.雪菜は最初に全て暴露した.この呪いを解決しなくては雪菜が永遠にかごの中の鳥のままなのだと思う.このルートに行くときは雪菜に見抜かれている嘘をつかなくてはいけない.冴えカノでも加藤はそうした態度にフラストレーションを覚えていたことを思い出したが,どうも一番譲れないところがそこにあるらしい.どのエンドでもこのエンドでもそうだけど,かずさは苦しみ悩む.でも最終的に結論を出して前に進むのが私の心をつかんで離さない.このルートはかずさが心的な繋がりを見出し自立する(?)からもう二度と離れたくなくなる.

雪菜trueエンド感想

 雪菜のずっと願っていた幸せなことと幸せなことを両立した甘々なエンド.雪菜はやっぱりひとつ芯の通った考えを持っている.でもそれを自分だけでは行使できない.結局のところ5年の間何も変わっていなかった.しかし,この5年間考え続けて,明確な答えを見つけていたことが違った.かずさエンド同様に相手が折れるまで2人は真摯に向き合った.解決しなくてはいけない意識をずっと抱きつづけて子作りはしていなかった.これが千晶の考えていた雪菜像で,主人公を追い込もうとしたときに没にした理由とつながってぞくっとした.かずさエンドと同様に二人のケンカに主人公は介入することなかった.1部で迎えた最悪の結末は2人のヒロインが互いに気を使いあって,譲り合おうとするところに原因があったことが明確になった.2部にはなかったエンドだ.麻里さんと雪菜が話し合うことはなかった.伏線を解決しつつも同じことをすることがない解決で,素晴らしいエンドだった.結末自体はかずさも思い描いていたけれど,かずさには友人がいなかった.主人公以外に協力する人がいなかった.雪菜は多くの人物からの愛をうけて育ったので周りの人の全ての愛が雪菜であった.すべての愛を確認することができた.だからこそ誰かから否定されることができなかった.まるで健やかに育った大樹であった.誰かを怒って否定することができなかった.かずさは二人のからの愛しか確認することができなかった.かずさにはまるで根っこと呼べるものが一切なかった.かずさが本当に必要にしていたものは人から与えられる自分を保つ芯であった.主人公である必要はなかったことを気づかせなくてはなかった.もちろん早いうちにかずさと付き合えばかずさルートで結果的に同じような結末を迎えることはできたかもしれないが,それを考えることは自明なうえに野暮だろう.5年後における最適解であることは間違いない.というよりこの解を作るまでの経路と可能性の提示が何よりも素晴らしい.

結局どうすれば1部で円満になれたか

温泉旅行で雪菜を振る.

全編を通した感想

 やはりかずさ派である.次点に千晶がすき.雪菜という人に恵まれた人物はもっとも人間らしく,生生しく,醜い.曲がいい.絵が美麗で,構図の使い方が勉強になる.キャラとのこころの距離感がよくわかるように描かれているからすごい.テーマ曲を崩した楽曲をあらかじめ流しておいて,流れた時のテンションを最高に高めるのが良い.すべてが前に出すぎず,バランスよく楽しませてくれた.いい体験ができた.

WHITE ALBUM2 -幸せの向こう側- AQUAPRICE2800 – PS Vita

投稿者: beefst

機械工学,クリエイターをしています.読書も好きです.

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