前回
ミキシング・マスタリングに特に必要なことは、ノウハウ(プリセット、ワークフロー)といいプラグインだと思う。弘法筆を選ばずを思い出し、できていない自覚があるならば、良いものを導入すると良いだろう。そうすると、それを扱うことができる程度には成長するだろう。
今回も例によってレシピであることに注意していただき、自分が了解できることだけを取り入れてもらえればよいかと。また、個人製作に限定した方法論なので、悪しからず。

アレンジ
どのような音をイメージで鳴らすかを考えながらアレンジする。色ラフを作りながら線画を描くように。また、ミキシングは魔法ではない。過剰に期待してはいけない。
ミキシング
ミキシングは、(コンセプトを)伝えるためのイメージを深める作業。
違和感を少なく、何を聴かせたいのかを明確にする(毎回対峙すべき問題)。
大前提として、全体が客観的に美しくなるようにする(ノウハウ・ソフトウェアでクリア可能)。もしかすれば「必ずしも美しくする必要はない」という意見があるかもしれない。美しさは作家の個性かもしれないが、美しくできない人の意見ならば聞くに値しない。脚本は面白くしなくても良いと言っているようなものだ。また、美しさと聞きやすさは別問題である。そこは目的毎に合わせるべきだろう(でも美しさを優先したい気持ちは持ってほしい)。
①フェーダーで音量をバランスよくする
バッキングをむやみに削りすぎないこと。集中して聞いた時に全体を聴き取れるように。スピーカーを買って、小さい音量で作業した方がいい。その後、大音量でバランスを再度チェックする。
②EQ
歪み・共鳴など密度に違和感のある場所、ローが濁りすぎている場合、耳を指すような音が出ている時に削るように使う。また、全体が美しくなるようにリズム隊の特定周波数を持ち上げたりすることもある。
③空間系・モジュレーション(あくまで私がいつも挿すタイミング)
滑らかさは曲に応じて。空間系はドライに近い方が輪郭がでることを意識する。モジュレーションは曲をより豊かにするために。あるいは飛び道具のように。どのような使い方をするにせよ、この後のイメージを深めるためのツールになるので、慎重に行うこと。
④アレンジに戻る
より音像のイメージを深める。音を足したり、ダイナミクスを考え直したり、あるいはフレーズそのものを作り変えることもある。私はここでLFO・高域・アンビなどを足す。はじめからアンビでイメージを作る時もあるが、後から足す方がまとまりやすい。
⑤ダイナミクス(空間系の前に挿入すること)
バッキングのグルーブを抑えて主役を立たせる。コンプをかける時、いくつかのパートをミュートして、そのうえで聞き心地のよいグルーブが作ることができるようにする。
ステムを作るべきだという声はあるが、ステムを作ってコンプを挿すと良くも悪くもまとまりすぎる印象があるので、脳死で作ればいいものでもないと思う。
⑥オートメーション
オートメーションは必要以上に使わない。必要な場所を明確にし、必要なだけ使うと効果的である。オートメーションでダイナミクスを作るくらいならアレンジからやり直すべきである(一部のコアなジャンルではその限りではない。あくまで基本)。フェードでできるユニークなことはフェードでやる。リバーヴのWet/Dry値の操作はオートメーションを使うと面白いので、試しても良いと思う。歪み値に揺らぎを与えることもできる。
マスタリング
マスタリングではほとんどやることがないのが理想。逆に、やることがある場合は即座にミキシングに戻り問題解決を行うべきである(あくまで個人製作だからやれることだが)。
①コンプ
マスタリングコンプは弱ければ弱いほどいい。コンプをかけるときはラウドネスメーターとにらめっこすること。レンジとダイナミクスをイメージに合わせる。ターゲットのラウドネスは各種ノーマライズに合わせるととりあえず間違いはないでしょう。むやみに音圧を大きくしても良いことはない。ただし、市場に流れている曲にラウドネスを合わせるのは意義のあることです。アルバムのように家で清聴でき、手元も自由なら問題ないですが、例えばドライブや、作業用などに使われることを考えると、音量差は聴かれなくなる理由になりうる。
②EQ
主に削る方向に。大きく(±0.3dBくらい。要するにあからさまに違いが出るくらい)動かす必要を感じた場合、ミキシングに戻る
③リミッター
特に理由がなければOUTは-0.1dBにする。圧縮音源時の時のピークがうんたらかんたら。
次回↓
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