前回
オートメーションは時間を無限に食うイメージがあり、避けて通ってきましたが、重い腰をあげて取り組みました。わかったことは、実際に無限に時間を食うこと、オートメーション無しのミキシングには戻れないということです。使いこなすことによってトラックのレベルがググっと引き上げられます。一方で、時間を食うので、的を絞ることが重要です。また、書き方にも注意すると良いでしょう(むやみやたらに波打つようなオートメーションを書いてはいけない!!)。また、当たり前ですけど、トラック作成の時点である程度整えるようにしましょう……。スネアロールを作るためにオートメーションでグルーブを作る人なんていないでしょう……それはそれで面白そうではありますが。
基本
オートメーションは、以下のようなものとして使うと良いでしょう。
①意図を明確化するもの
②ミキシングの聴き心地をよくするもの
意図を明確化するとはすなわち、ここをこのように聴いてほしい、ここが聴きどころだよ!というのをわかりやすくリードするということです。例えば、ギターソロの時にドラムがうるさいとどう思いますか?それがサウンドする場合もありますが、曲を作った人としては、ここはギターを聞いてほしいのに!と思うでしょう。お笑い芸人をイメージしてください。ここは笑うところだよ!って時に客がシラケてたら辛いですよね。そうならないようにフォーカス、スポットライトを当てるようにボリュームのオートメーションを書きます(いうまでもありませんが、この時にはトラックのボリュームのバランスは取れている前提です)。場面ごとに同じ値に上げ下げましょう(Aメロ、サビ、ソロなど)。ジグザグや、上昇下降はあまり効果的ではありません。何を聴かせたいかを実現するための方法としてオートメーションを使うことを意識しましょう。下がってほしいトラックのボリュームを下げる、立てたいトラックをボリュームをブーストする(EQで1~8kHz周辺を上げても良いと思います)。数値的なものはまちまちなのでなんとも言えませんが(個人的には±3~4dBくらいがちょうどいいかな…)、肌感覚でできないのならばオートメーションを書くのはまだ早いでしょう。
ミキシングの聴き心地をよくする……つまり、ミキシングのクオリティを上げることに近いですが、やることは、ピークを手コンプするようにオートメーションでボリュームを削ることです。とりわけ、上物(ストリングス、シンセパッド、シンバル)、バス系統(ドラム)は、全体のバランスを悪くしがちです。それらのボリュームを削ることで聞き手の集中力を摩耗させないようにしましょう。ボリュームを削ると言いましたが、ボリュームの方がより簡便であるというだけで、EQのオートメーションを書く方が良いサウンドになると僕は思います。例えば、上物であれば、高い部分より中域がぶつかって邪魔になっている場合がありますし、タムなどではボリュームを削ってしまうと800Hz辺りのおいしい鳴りまで削れてしまいます。なので、時間に余裕がある場合はEQのオートメーションを書きましょう。

応用
ボリューム、EQが基本的に使用するオートメーションと述べましたが、それ以外のオートメーションも面白いです。主に、future系のモダンなダンス曲では効果的に使用されます。また、以下の方法は品質を上げる一方、デジっぽくする、エンジニアリング色が強くなる可能性が高いので注意しましょう(それが好みでない人も存在する)。
リバーブのDry/Wet値を下げることで緊張感を作れます。上げると広がっていく演出を作れます。ルームサイズなども変えることはできますが(それはアナログ機材で行った場合、特殊な効果を生みます)、Dry/Wetが扱いやすくてよいです。
歪みを加えることでボーカルを飛び道具化できます。また、歪みを強化してざらつきを足したり、(ギターなど)部分的に、あるいは段階的に音色を変えることもできます。同様にシンセバスでも使えます。
フィルターのON/OFF……つまり部分的にステップフィルターやLFO効果、スライサー、ボコーダーなどを付与してトラックを飽きさせないようにすることができます。ON/OFFの切り替えのみなので時間がかからなくてよいです。フィルターの内容はプリセット化してしまえば応用できますし。
ストリングスなど、波打つようなオートメーションを書くことについて
詳細なオートメーションを書くと質は良くなります。しかし、時間がかかるため、他に改善できる場所はなかったのかを検討した後にやると良いと思います。また、限定して行いましょう。同じ時間上で波打つようなオートメーションを複数トラックで書かないこと(フォルダごとまとめてやる場合を除き)。中域ではやらないこと(バス系や高域のトラックに限定すること→バスは重厚感の操作、高域は耳に付きやすい、といった理由で効果的になる場合が多い)。
とはいっても、future系って結構オートメーションだらけじゃない?と思ったそこのあなたは、VolumeShaper6やLFOTOOLといったLFO系のプラグインのON/OFFなどでできるだけ書かなくても良い方法を模索すると良いと思います。オートメーションは最終手段です。時間を溶かします。はじめに整えるボリュームのバランスに一秒でも多く時間を割くべきです。
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